●デザイン分野の「産学協同研究」。
2006年、環境NPO:Eco Smartを設立して早いもので3年目に入りました。現役サラリーマンのため活動は休日中心で、インターネットで環境問題に視点をあてた主張と提案からスタートしました。活動していく中で、環境問題の解決策は幅広く存在することがわかりました。環境問題の解決!と言うと堅く難しいイメージがありますが、身近な行動としては、家で「電気をこまめに消す」「水道の水を出しっぱなしにしない」など、手軽に誰でも簡単に実践できます。

■1「企業の環境研究」
企業がどのように取り組んでいるか!を直接知りたいと思い、環境展示会などによく出かけました。会場には、各企業のブースがたくさんあり、真剣に取り組んでいる姿がありました。環境問題はテーマによりますが、内容が地味な分野と華やかな分野とがあり、注目度に大きな開きがあります。そんな中、各企業のブースで説明員と話してみた結果、彼等の悩みが浮かび上がってきました。つまり環境ビジネスを狙った企業研究も、どちらかといえば技術優先で進められているため、試作品にデザインが考慮されず、消費者からみてインパクトが低いのです。大手企業は「デザイナーがいても、自分の環境研究に自社のデザイナーを投入できるとは限らない」との意見も出ました。また中小企業などは、「自社にデザイナーがいないから」、また「研究費節約のためデザインに手が回らない」などの意見もありました。

■2「大学の環境活動」
展示会は企業展示ブースが中心ですが、各大学で環境問題に関心のある大学がゼミ単位でブースを出していました。それぞれの大学のブースで、彼等の主張を聞きながら、いろいろ話し合ってみました。大学のブースはどちらかと言えば環境理論が中心で、実践的取り組みは少ないようです。その中で慶応大学が、地域の子ども達とゴミ拾いをしたり、子ども環境教室を開いていたのが印象的でした。
私の地元横浜(港北ニュータウン)でも、武蔵工業大学が地域の学校や環境NPOと連携して活動しています。結果、地域住民は活動内容を知っています。武蔵工業大学は環境情報学部があり、学部を挙げて地域と連携活動を推進しているからです。地域住民にも感謝され、学生からも大変有意義との意見がたくさんでています。

■3「新規事業の視点」
たくさんある展示会の中で、環境やIT分野を新規事業として取り組んでいる企業や大学の展示会がありました。各企業とても意欲的なのに感心しました。今は有名なIT企業も、最初はこのような展示会の小さなブースから始めたのだろうと思いました。
この中に、日大芸術学部工業デザイン科の肥田教授と産学協同研究を成功させた、近畿大学大学院ロボット研究チームの小さなブースがありました。私がブースをのぞいて声をかけてみました。すると、すぐにこちらの考え方に賛同してくれ、合意を得ました。技術優先の近畿大学チームと、デザイン力のある日大工業デザイン科チームが力を合わせて魅了的なロボットを作るプロジェクトです。最近完成したロボット(写真参照)は、デザイン方面の展示会にも出され、「日芸工業デザイン科の名をPRするのに大いに役だった」と聞きました。また、このような学と学のプロジェクトは担当教授の能力や人柄も大きく影響しますので、中心となった日芸工業デザイン科の肥田教授の人柄・センスが成功の隠れた大きな要因と思います。
■4「東京モーターショー」
東京モーターショーで、各企業・大学の展示ブースを見た時もっとも印象に残ったのは、慶応大学が環境貢献を大きくPRしている電気自動車「エリーカ」のブースでした(写真参照)。この展示は群を抜いていると思います。その理由は日本最大の展示会「東京モーターショー」に過去も含め2度展示しているからです。 「東京モーターショー」はおばけイベントで、世界中の自動車業界VIPの来場だけでなく、自動車関連企業から専門家がたくさん集まります。「環境展が日本を代表するビックイベントに成長してきた!」と言われていますが、それでも期間中の来場者は最大でも15万人レベルです。東京モーターショーは140〜150万人と一桁違うレベルです。その超ビックイベントの中で、慶応大学だけが専用ブースを設けて電気自動車を展示しているのです。研究テーマ(電気自動車)と慶応大学のブランド力が相乗して大人気でした。30社の協賛企業の力も大変大きいと思います。余談ですが、慶応大学環境情報学部の女子学生が専用のコンパニオン制服を着てずらりと並べ、別の意味でPR効果抜群です。

■5「慶応大学産学協同研究」
この慶応大学の電気自動車「エリーカ」の産学協同研究のスタイルは、他大学と違うところがあります。基本形態は「大学+民間企業」で特徴はないのですが、大学の研究代表が2名いることが大きな特徴です。それは、ハード中心の「技術担当教授」と、ソフト中心の「民間企業に長く勤めた文系教授」(民間企業との橋渡しや電気自動車のビジネス性を研究する)で推進しています。このスタイルは大変な威力を発揮する!と言われてました。なぜか?それは私自身が製造業勤務だからよく分かるのです。物作りには、開発・製造・販売の各分野の叡智結集しなければ商品化は難しいです(単なる技術研究やデザイン研究だけなら必要なし)。慶応大学の開発研究形態は、うまくポイントを踏まえた方式です。ちなみに、90年代アメリカのシリコンバレーで起こった「大ITブーム=大成功」も、優秀なエンジニアのアイデアに、経営の専門家や投資家が参入して推進したので大成功しました。この方式は定番化されています。

■6「最近の傾向」
話題の多かった産学協同研究も一定の時間が経過し、変化の兆しが出てきました。展示会などで各企業担当者と話しあってみると、ブームとしての産学協同研究は終わり、企業側が明快な結果を求めるようになりました。別の言い方すれば、結果の出せない大学との産学協同研究は求めない姿です。この民間企業の傾向をどう評価するか!は別にして現実の姿のようです。
最新のNUDN(2005・12・30)に掲載されているように、「デザイン系大学ランキング」における日芸工業デザイン科の成績は大変すばらしいものがあります。清水教授・肥田教授などの教授陣の大健闘、学生のコンペ受賞・展示会出展・産学協同研究の大成功・・・・・・など日頃の関係者の努力の結果です。OBとして大変うれしく思っています。

■7「今後の提案」
私なりに過去1年の活動の結果として、日芸工業デザイン科の更なる大発展をめざした一つの提案をしたいと思います。それは、工業デザイン科単独の共同研究方式(ロボットデザインを中心大きな実績を出している)とは別に、「オール日大の力を結集したプロジェクト」を日大本部に働きかけることです。
テーマはいろいろ考えられますが、日大が伝統的に乗物系に強いので自動車を薦めます。具体的には「ソーラー乗用車の産学協同研究」です。理由は、外部からエネルギー供給が必要な電気自動車に対し、エネルギーの自己完結型であるソーラー乗用車が総合的に良いと判断しました。もちろん環境にも大変良いです。理工学部と工業デザイン科を中心に経営学科など総合大学日大の良さを最大限に生かすシステムです。産学協同研究ですから、外部企業も必要です。また、OBもボランティアで積極的に応援するスタイルです。

■8「最後に」
日芸工業デザイン科の先生で、日大理工学部・桑沢デザイン研究所・イリノイ工科大学を出て、GE社チーフデザイナーからの役員まで上りつめた故岡田朋二先生は、「工業デザインは総合力が必要なので、総合大学で勉強した方が、すばらしいデザイナーがうまれる!」が持論でした。私は、この言葉を実社会に出てはじめて理解しました。この岡田見解を、もっとも明快に実践しているのが慶応大学の産学協同研究「エリーカ」なのです。工業デザイン科まである日大の総合力を最大限に生かした「産学協同研究:日大ソーラー乗用車研究」をスタートさせ、2010年までに実車完成まで到達させたいものです。かつての「理工学の人力飛行機」は日大の看板でした。その技術蓄積から風力発電機のベンチャー企業が生まれました・・・・・・。工業デザイン科が加わることで、それに負けないくらいの成果の多い「継続的な産学協同研究」にしたいものです。
研究室・学生・OBのみなさまの更なる活躍を期待して最後の挨拶にしたいと思います。
尚:私個人の勝手な意見ゆえ、みなさまからの反論・感想などがあると思いますので、下記にメールをお寄せ下さい。
2006.01.19

・環境NPO:Eco Smart:加藤 均
・Eメール:yta114@yahoo.co.jp
・URL:http://ecosmart.web.infoseek.co.jp/e
日芸工業デザイン科のデザインで大好評だったロボット君
東京モータショー2005に出品した慶応大学電気自動車「エリーカ」
※ロボットは日芸工業デザイン科と近畿大学大学院の産学協同研究
※16名いる専属コンパニオンは全て慶応大学の学生!